ヘリウム元素の密度や比重、融点や主な用途をまとめたヘリウムの化学記号一覧表を以下にまとめておる。
ヘリウムは宇宙の誕生と言われるビッグバンの直後に生まれた元素のひとつで宇宙では水素に次いで2番目に比率の多い元素じゃ。
【ヘリウムの化学記号表】 | |
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発見者 | エドワード・フランクランド ノーマン・ロッキャー(イギリス) |
発見された年代 | 1868年 |
元素記号 | He |
原子番号 | 2 |
英語表記 | helium |
分類 | 非金属・希ガス |
原子量 | 4.0026 |
密度(kg/m³) | 0.1785 |
比重 | 0.13~0.14(空気比) |
融点(℃) | -272.2℃ |
沸点(℃) | -268.934℃ |
同位体 | ³He(0.00014%)/ ⁴He(99.99986%)/ ⁶He(β-0.807秒) |
電子配置 | 1s² |
主な用途 | 冷却材(超伝導磁石冷却用など) マジックボイス(変声用混合ヘリウムガス) 呼吸用ボンベ 風船・バルーン(イベント用等) |
ヘリウムは地球上における存在比率は少ないものの、宇宙空間においては水素についで多い元素で宇宙全体の約10~11%程度がヘリウムで構成されていると言われておる。
水素が80~88%程度を占めることを考えると宇宙空間には水素とヘリウムが約99%もの割合で存在しておることになるから宇宙はやはり不思議じゃのぉ。
原子番号2番のヘリウムは「ビッグバン」によって宇宙が誕生した後に水素に次いで誕生した元素じゃ。元素周期表におけるヘリウムは18族・第1周期元素として配置されておる。
宇宙が誕生してからおよそ4億年もの期間、宇宙に存在した元素は水素とヘリウムのみじゃったと言われておる。
第1周期にある1族の水素と18族のヘリウムという両極端な性質を保持している2種類のみであったというのも不思議なものじゃのぉ。
ヘリウムの構造は原子核に「陽子」と「中性子」がそれぞれ2つずつありマイナス電荷の電子が2つ。
水素に次いでシンプルな構造となっており、水素に次いで軽い元素でもあるのじゃよ。
子供に人気の高いイベント用のひも付きの風船の多くは中に「ヘリウムガス」が注入されておることはご存知の方も多いじゃろう。
これはヘリウムが空気よりも軽い気体であるという特性を活かして風船に利用されているという訳じゃな。
またヘリウムは元素周期表の18族に属する「希ガス元素」に分類されておる。「希ガス元素」は外側の電子殻が満たされておる為、常に安定した状態を保っている元素であることも大きな特徴の一つじゃ。
液体ヘリウムは宇宙の中で現在確認されている元素の中で最も沸点の低いヘリウムを使用した冷却材じゃ。
液体ヘリウムは既に多くの設備や機器類の冷却材として使用されておる。
ここでは液体ヘリウムの優れた冷却材としての能力と価格・値段の高等問題、更に代表的な冷却材である液体窒素との沸点の違いなど化学の視点から液体ヘリウムをチェックしてみるとしよう。
ヘリウムは2000年代に入り「ヘリウムの枯渇問題」が徐々に表面化し価格の大幅な高騰を招くようになってきておる。
ヘリウムの市場価格が高騰を続けている原因は「超伝導磁石冷却用」の冷却材として液体ヘリウムが多用されるようになってきた為じゃ。
冷却材として使用可能な元素は多くの元素が存在するが、液体ヘリウムはほぼ絶対零度に近い温度であっても液体として使用できる地球上で最強レベルの冷却材として注目を集めたのが価格の高騰を招いたひとつの要因でもあるのじゃな。
ねぇ博士~、ヘリウムは元素周期表では18族に属する構造が安定している「希ガス」に分類されているんだったよね。
この希ガスであるヘリウムガスが液体ヘリウムになると重宝されるってことなの?
うむ、ポンちゃんこれは良い質問じゃ。まず地球上のヘリウムは大気中から取り出すことができない為、我々が使用しているヘリウムは工業用ヘリウムを加工した製品であることを覚えておく必要がある。
前述してきた通りヘリウムは宇宙で2番目に多い元素ではあるが、地球上で製品用として使用できるヘリウムは工業用のガスなどから抽出する必要があり製造コストはイメージしているよりもかかっておるのじゃな。
そしてポンちゃんの質問にある液体ヘリウムが重宝される理由は、希ガスであるヘリウム元素を液体に変化させるためには「-268.93度以下」まで温度を下げる必要が有ることが大きなポイントじゃ。
268.93度?そこまで温度を下げないとヘリウムは液体に変化しないの?
うむ、実はヘリウムは地球上で現在までに確認されている全ての元素の中でも融点・沸点が最も低い元素なのじゃ。
その為、全ての物質が凍りつき個体となると言われておる絶対零度の環境下においてもヘリウムは液体のまま存在する事が可能な唯一の元素なのじゃな。
但し、圧力を徐々に加えながらほぼ絶対零度と同様の温度まで温度を下げない限り液体ヘリウムは製造ができない為、この製造にかかるコストが高騰し他の冷却材に使用される元素よりも割高な価格になってしまう背景があるのじゃな。
液体ヘリウムを製造するためにはしっかりとした設備を整えて製造しなければいけないって事なんだね。
超伝導磁石の冷却を必要とする施設としては「半導体製造工場」の他、医療機器の「MRI」などの冷却にも液体ヘリウムが使用されておる。
尚、液体ヘリウムがMRIに使用されておるのは、MRIの「超電導マグネット部分」の冷却材としての利用じゃ。
価格的には高価な液体ヘリウムが使用されるのは精密機器類や液体窒素以上の超伝導体が求められる環境下が主流なのじゃな。
※液体ヘリウムはMRIなどの超伝導体の冷却にも利用される
ヘリウム価格の高騰が今後も続くようであれば液体ヘリウムに変わるハイレベルの冷却材が求められてくる事も想定されるのぉ。
尚、冷却材の主流とも呼べるやや安価な液体窒素の沸点は「-195.8度」となっておる。
これは液体ヘリウムの沸点である「-268.934度」よりも遥かに高く、この液体窒素よりも高い沸点で超伝導現象を起こす物質を「高温超伝導物質」と呼ばれ、現在も少しずつ高温超伝導物質が確認され続けておるんじゃよ。
今後の研究によってはより安価でより扱いやすい冷却材が開発される可能性がまだまだ十分にあるのじゃな。
ヘリウムガスを使用した製品の代表はゴム風船用のボンベや飲み会の余興等で使用される声変わり用のボンベが有名じゃのぉ。
ここではヘリウムガスによって声が変わる仕組みやヘリウム風船が浮かぶ原理について化学の視点からチェックしてみるとしよう。
ヘリウムを語る上で欠かせないものが「マジックボイス」という吸い込むと声が変わる不思議な製品じゃ。
子供の頃、マジックボイスを吸い込むとまるで「ドナルドダッグ」のような声になってしまう不思議なガスで遊んだことがあるものも多いじゃろう。
あのマジックボイスの中に含まれているガスこそが「ヘリウムガス」と呼ばれるヘリウム元素を含む魔法のガスなのじゃ。
魔法のガスって博士もかっこいいこと言うんだね。
なんとなくじゃ。
へぇ~、マジックボイスにはヘリウムガスが入っていたんだね。でもどうしてヘリウムガスを吸い込むとあひるさんみたいな声が出るようになるの?
うむ、この声が高くなるメカニズムにはヘリウムガスの密度が関係しておるのじゃ。
ヘリウムは空気よりも軽い為、ガスを含んだ声は空気の中を速いスピードで移動し高い音質の声となって聞こえてるようになる。
これは、音の波長を調べるとよくわかるのじゃが、空気中の音は波長が長くゆったりとしているのに対し、ヘリウム中の波長は短く小刻みな波長になっておる。
空気と比較すると密度の低いヘリウム中では波長が大きく変化し一時的に吐き出す息の中で音速が早くなり声が高く聞こえるようになるという訳じゃ。
※ヘリウムガスの密度は空気よりも軽い
ヘリウムはこの空気よりも密度が低い特性を活かし大型家電製品店のイベントなどでよく見かける子供向けの風船などに入れる気体としてもヘリウムは活用されておるのぉ。
また大型百貨店などの屋上で見かける「広告宣伝用バルーン」などにもヘリウムガスは使用されておるのじゃよ。