ベリリウム元素の密度や比重、融点や主な用途をまとめたベリリウムの化学記号一覧表を以下にまとめておる。
まずは「ベリリウム」の基礎知識からの学習じゃ。
【ベリリウムの化学記号表】 | |
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発見者 | ルイ=ニコラ・ヴォークラン(フランス) |
発見された年代 | 1797年 |
元素記号 | Be |
原子番号 | 4 |
英語表記 | beryllium |
分類 | 灰色金属・レアメタル |
原子量 | 9.0121 |
密度(kg/m³) | 1848(固体) |
比重 | 1.85 |
融点(℃) | 1279℃ |
沸点(℃) | 2970℃ |
同位体 | ⁷Be(53.12日)/ ⁹Be(100.00%)/ ¹⁰Be(β-1.51×10⁶年) |
電子配置 | 2s² |
ヤング率 | 287GPa |
主な用途 | ベリリウム銅合金 航空機の部品(アルミニウムとの軽量合金として) エックス線透過材 宇宙望遠鏡(反射鏡部) 原子炉の中性子の減速材 電子部品材料(絶縁体) バネ |
ベリリウムはX線透過材としての使用や原子炉の減速材としての使用など、我々の生活に欠かせない元素素材じゃが名称としては表舞台に出ることがないため認知度の低い元素と言えるかもしれんのぉ。
ベリリウムは金属元素としてはリチウムに次いで軽い金属元素であり大気中でも変色や過度の酸化反応を示さない金属としては最軽量金属に分類され単体で使用できる金属としても知られておる。
但し単体のベリリウムは毒性があることが確認されておるため、使用用途は限られておるのが現状じゃ。
原子番号4番のベリリウムは宝石の「エメラルド」や「アクアマリン」の主成分である鉱物じゃ。元素周期表におけるベリリウムは2族・第2周期元素として配置されておる。
ベリリウムは反応性が高く空気中では酸化作用が働き酸化ベリリウムとなる。
この酸化ベリリウムの表面皮膜は安定性が高く、金属元素としては空気中で金属のまま取り扱うことが可能な最小元素となっておるのじゃよ。
※酸化ベリリウムは空気中で単体金属として扱える最小元素である
またベリリウムは硬度も高く熱にも強い元素であり、更に軽量であることから高い可能性を秘めた元素として注目を集めておる。
但し、強い毒性を持ち加工が難しいという大きな欠点があるため、この毒性に対する問題点の解決がベリリウム化合物製品の市販化を行なう上での重要な課題となっておるのじゃ。
宝石のエメラルドやアクアマリンはおそらく誰もが耳にしたことのある宝石じゃのぉ。
エメラルドやアクアマリンそしてクリソベリルなどの宝石はどれも主成分がベリリウムで構成されておる。
ベリリウムが発見されたのは「緑柱石」と呼ばれる文字通り緑色の鉱物の中。
この緑柱石(Beryl)のスペルからベリリウムという名称がつけられておるのじゃよ。
エメラルドって緑色をした綺麗な宝石のことだよね。ピカピカしてとってもかっこいい♪
うむ、ベリリウムが発見されたとされておる緑柱石の中にはベリリウム鉱物が僅かに含まれておることが確認されておる。しかし、エメラルドなどの宝石類が緑色をしているのは宝石の成分に「バナジウム」や「クロム」などの鉱物が含有されておる為なのじゃ。
また含有成分が異なるエメラルド原石はやや黄色がかった緑色の鉱物もあり、これらの鉱物は加熱処理を施すことでアクアマリン鉱石へ加工することが可能となっておるのじゃよ。
フランスの化学者であるベリリウムの発見者の「ルイ=ニコラ・ヴォークラン」はベリリウムの発見当初、ベリリウム鉱石を舐めてみたところ甘い味がしたことからギリシャ語の「glukos」にちなみグルシナム)と名付けておる。
しかし、甘い味のする化合物は実際には多く存在するため、1949年に「IUPAC(国際純正・応用化学連合)」にて前述した緑柱石(Beryl)のスペルを語源とするベリリウムという名称へ変更された経緯があるのじゃよ。
ベリリウムの性質が最も活かされた形で使用されておる分野は何と言っても航空宇宙分野じゃ。
ベリリウムの最大の特徴である軽量かつ高強度という特徴は宇宙科学分野では非常に重要な鉱物であることは間違いないのぉ。
またアメリカでは軍事用の高速戦闘機など軽量化が求められる航空分野でも主要構造材のひとつとしてベリリウム銅合金がもちいられておるのじゃよ。
宇宙に行くと重さってなくなっちゃうんだよね。無重力状態って言葉もよく聞くしさ。高い強度が必要なのはなんとなくわかるんだけど、どうして宇宙科学分野では軽い鉱物であることが重要なの?
うむ、いい質問じゃな。まず航空宇宙分野で使用される物質は宇宙への打ち上げの際の衝撃に耐えうる性能があることが求められる。
衛星や宇宙船の打ち上げシーンをポンちゃんも一度はTVで見たことがあるじゃろう。宇宙船の打ち上げでは莫大なエネルギーが必要となり、打ち上げの際の激しい衝撃に耐えうる為にも強度が高い部品が求められる訳じゃ。
また宇宙船の打ち上げに必要となる燃料タンクは途中で切り離されるが、この打ち上げの際に必要となる莫大な燃料にはやはり限りがある。
その為、宇宙へ飛ばす際には出来る限り船体が軽量である事が望ましいのじゃな。
そしてこれらの性能を保持しておる鉱物のひとつがベリリウムという訳じゃ。
尚、高度が高く軽い元素であるベリリウムは「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」の反射鏡としての利用も決定されておるのじゃよ。
ベリリウムはアメリカ航空宇宙局が中心となり開発中のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の反射鏡の主要原料としても使用されることが決定しておる。
JWSTは赤外線観測用宇宙望遠鏡でビッグバンで発生したと推測される赤外線(宇宙背景放射)の観測を行い宇宙が生まれた当初の状態を調査するための期待の宇宙望遠鏡じゃ。
今まで数々の宇宙の謎の解明に貢献してきた「ハッブル宇宙望遠鏡」の後継機にあたるのぉ。
但し、JWSTの打ち上げに関する莫大なコスト問題は経済市場が低迷しているアメリカにとっても大きな負担となるため、2018年にJWSTが本当に打ち上げ可能かどうかは疑問視されておるのが現状なのじゃ。
尚、このジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の名前の由来は「NASA」の二代目長官である「ジェイムズ・E・ウェッブ」の功績をたたえて命名されておる。
ジェイムズ・E・ウェッブは月の探索で有名な「アポロ計画」の主導者でありアメリカの宇宙開発に大きく貢献を果たした当時のNASAの長官。
現在も残るビッグバンの大爆発の残り火である赤外線を探索するという壮大な計画が立てられた当初はハッブルの次世代の意味からシンプルに「次世代宇宙望遠鏡」と名付けられていたが2002年になりジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡と名称が改名されておる。
病院等で行われるレントゲン撮影。これは誰もが一度は受けたことがあるのではないじゃろうか?
このレントゲン撮影に使用されるレントゲンのX線管(ガラス管)の放射窓部分の窓材料に最も適している元素素材としてベリリウムが使用されておる。
X線は原子核と原子核を取り巻く電子によって構成される原子に照射する際、電子の数が多くなるほど透過率が低下する。
その為、電子の数が少ない金属であればあるほどレントゲンの窓材料に適した金属素材であることになる訳じゃ。
※X線は電子数が少ないほど透過率が高くなる
電子数が最も少ない金属と言えば、やはり最軽量の「アルカリ金属」でもある原子番号3番のリチウム金属をまず最初に誰もが考えるはずじゃ。
しかし、このリチウム金属は地球の体中では窒素と激しく反応し酸化反応を示し、真っ黒な「窒素リチウム」へと変色してしまう。
そのため、リチウムは単体の金属として使用することはできないのじゃ。
リチウム金属は単体では激しい酸化反応を起こす為、軽量ではあるが使用が難しい部分がある。そこで、空気中でも安定性の高いリチウムに次いで原子番号が最小の金属であるベリリウム金属がエックス線の窓材料に最も適した元素となっておるのじゃよ。
ベリリウム金属は表舞台に登場することは少ないため、広く知られている元素ではないものの我々の生活社会にとって密接な関わりを持つとても重要な金属の一つなのじゃ。