液体ヘリウムは宇宙の中で現在確認されている元素の中で最も沸点の低いヘリウムを使用した冷却材じゃ。
液体ヘリウムは既に多くの設備や機器類の冷却材として使用されておる。
ここでは液体ヘリウムの優れた冷却材としての能力と価格・値段の高等問題、更に代表的な冷却材である液体窒素との沸点の違いなど化学の視点から液体ヘリウムをチェックしてみるとしよう。
ヘリウムは2000年代に入り「ヘリウムの枯渇問題」が徐々に表面化し価格の大幅な高騰を招くようになってきておる。
ヘリウムの市場価格が高騰を続けている原因は「超伝導磁石冷却用」の冷却材として液体ヘリウムが多用されるようになってきた為じゃ。
冷却材として使用可能な元素は多くの元素が存在するが、液体ヘリウムはほぼ絶対零度に近い温度であっても液体として使用できる地球上で最強レベルの冷却材として注目を集めたのが価格の高騰を招いたひとつの要因でもあるのじゃな。
ねぇ博士~、ヘリウムは元素周期表では18族に属する構造が安定している「希ガス」に分類されているんだったよね。
この希ガスであるヘリウムガスが液体ヘリウムになると重宝されるってことなの?
うむ、ポンちゃんこれは良い質問じゃ。まず地球上のヘリウムは大気中から取り出すことができない為、我々が使用しているヘリウムは工業用ヘリウムを加工した製品であることを覚えておく必要がある。
前述してきた通りヘリウムは宇宙で2番目に多い元素ではあるが、地球上で製品用として使用できるヘリウムは工業用のガスなどから抽出する必要があり製造コストはイメージしているよりもかかっておるのじゃな。
そしてポンちゃんの質問にある液体ヘリウムが重宝される理由は、希ガスであるヘリウム元素を液体に変化させるためには-268.93度以下まで温度を下げる必要が有ることが大きなポイントじゃ。
268.93度?そこまで温度を下げないとヘリウムは液体に変化しないの?
うむ、実はヘリウムは地球上で現在までに確認されている全ての元素の中でも融点・沸点が最も低い元素なのじゃ。
その為、全ての物質が凍りつき個体となると言われておる絶対零度の環境下においてもヘリウムは液体のまま存在する事が可能な唯一の元素なのじゃな。
但し、圧力を徐々に加えながらほぼ絶対零度と同様の温度まで温度を下げない限り液体ヘリウムは製造ができない為、この製造にかかるコストが高騰し他の冷却材に使用される元素よりも割高な価格になってしまう背景があるのじゃな。
液体ヘリウムを製造するためにはしっかりとした設備を整えて製造しなければいけないって事なんだね。
超伝導磁石の冷却を必要とする施設としては「半導体製造工場」の他、医療機器の「MRI」などの冷却にも液体ヘリウムが使用されておる。
尚、液体ヘリウムがMRIに使用されておるのは、MRIの超電導マグネット部分の冷却材としての利用じゃ。
価格的には高価な液体ヘリウムが使用されるのは精密機器類や液体窒素以上の超伝導体が求められる環境下が主流なのじゃな。
※液体ヘリウムはMRIなどの超伝導体の冷却にも利用される
ヘリウム価格の高騰が今後も続くようであれば液体ヘリウムに変わるハイレベルの冷却材が求められてくる事も想定されるのぉ。
尚、冷却材の主流とも呼べるやや安価な液体窒素の沸点は-195.8度となっておる。
これは液体ヘリウムの沸点である-268.934度よりも遥かに高く、この液体窒素よりも高い沸点で超伝導現象を起こす物質を高温超伝導物質と呼ばれ、現在も少しずつ高温超伝導物質が確認され続けておるんじゃよ。
今後の研究によってはより安価でより扱いやすい冷却材が開発される可能性がまだまだ十分にあるのじゃな。